慢性便秘症
概要
- 便秘により、腹痛やお腹の張り、不安、排便時の痛みや出血を伴うものとされています。
- 発症時期は、①乳児期(母乳から人工乳への切り替え、離乳食の開始)、②幼児期(トイレットトレーニング開始時)、③学童期(通学の開始や学校での排便の回避)が契機になることが多いです。
- 日本の小学生の便秘症は約5~20%程度と報告されていますが、最も多いのは幼児期(2~4歳)です。
診断
慢性便秘症は、便秘に伴う症状が1~2ヶ月以上持続するものです。具体的には、以下のうち2つ以上当てはまる場合です。
- 排便回数が1週間に2回以下
- 少なくとも週に1回以上の便失禁
- 過度に便が貯留した経験がある
- 痛みを伴う、または硬い便
- 直腸に大きな便の塊がある
- トイレが詰まるほどの便が出たことある
原因
- 便秘になる原因として、離乳食開始時期など食事内容の変化、牛乳アレルギー、排便時の嫌な経験、適切な時期と内容でないトイレットトレーニング、入園や小学校入学、引っ越しなど生活環境の変化時、などがあります。
治療
食事療法
- 朝、昼、夕と3食バランスの良い食事を摂取しましょう。
食物繊維の多い食品を積極的に摂るようにしましょう。
野菜も重要ですが、野菜で十分量摂取するにはかなりの量になります。
おすすめは、野菜類(切り干し大根、しその葉、モロヘイヤ、ゴボウ、ブロッコリー、トウモロコシ)、穀物(ライ麦パン、玄米、五穀米)、豆類(インゲン豆、小豆、大豆;おから、納豆、枝豆)、きのこ類(キクラゲ、シイタケ、エノキ、マイタケ、シメジ)、イモ類(ジャガイモ、サツマイモ、春雨、こんにゃく)などです。 - 乳酸菌などのプロバイオティクスの摂取も有効なことがあります。
特に特定保健用食品や機能性表示食品のヨーグルトや乳酸菌飲料を2週間試してみてください。2週間で効果がなければ中止していいでしょう。 - 牛乳アレルギーのこともあります。
一時的に牛乳(ミルク)を中止すると便秘が改善することがあります。その場合は牛乳アレルギーを疑います。便秘にならない程度の少ない量を摂るようにしましょう。 - 水分摂取は関係ないこともあります。
通常時は水分摂取量と便秘との関連性はありませんので、過度に摂取しても便秘は改善しません。夏の時期や運動後などに脱水傾向のある時には水分不足で便秘になることがありますので、しっかりと水分補給をしましょう。
排便習慣
- 我慢しない、させない
年長児以上の子は便意があったら我慢せずにトイレ(またはオムツ)で排便できるように促すようにしましょう。
幼稚園や学校、外出先でも可能な限り我慢せずにトイレに行くようにしましょう。 - 朝に排便する
起床後に飲水または食事をすることで胃が刺激されて便を出そうとお腹の腸が動き出します。そのタイミングでトイレに座るようにしましょう。
便秘の子の多くは夕方から夜に排便することが多いと思います。夕方以降は便の水分が減り硬くなり十分な排便量が見られなくなります。朝の便はみずみずしく快便になります。
薬物療法
よく使用される薬剤を挙げます。効果については個人差がありますので、効果が得られない場合は適宜変更します。
- 乳児期
ラクツロース、酸化マグネシウム、マルツエキス、ビコスルファートナトリウム、グリセリン浣腸、ビザコジル坐薬 - 幼児期
ラクツロース、酸化マグネシウム、ビコスルファートナトリウム、モビコール(2歳以上)、グリセリン浣腸、ビザコジル坐薬 - 学童期以降
ラクツロース、酸化マグネシウム、ビコスルファートナトリウム、モビコール、グリセリン浣腸、ビザコジル坐薬
治療期間は、お薬なしでも排便が可能な状態になるまでですが、おおむね便秘になってから治療開始までの期間と同じ期間かかることが多いです。
したがって、早めに受診すると治るまでの期間も短くなる傾向です。
まずは、食事療法と排便習慣を見直してみましょう。